家庭菜園の基礎

植物のつくりとはたらき

植物のつくりとはたらき
植物は基本的には、根・茎・葉の3つから成り立っています。
根

根では、水や栄養分を地中から吸収してほかの器官へ供給します。また、土の中に深く伸びて張り巡らされることで植物の地上部を支えます。

茎

茎では、根から吸収した水、栄養分や、葉でつくられたデンプン等の養分の通路の役割を担っています。

葉

葉では、光合成によるデンプン等の養分の生成を行っています。体温や水分量の調整のために蒸散を行ったり、呼吸(葉の気孔から酸素を取り入れ二酸化炭素を排出するはたらき)を行っています。

植物に必要な栄養素

多量要素

窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K) は、植物の生育に最も影響する成分とされていて、多量要素とも呼ばれています。

多量要素「窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)」
多量要素
多量要素
窒素

窒素は、葉・茎・枝の生長に必須となる栄養素で、「葉肥(はごえ)」と呼ばれます。不足すると葉が淡緑色となり、生育不良を起こしてしまいます。

リン酸

リン酸は、花・実の生長を促進するために必須となる栄養素で、「実肥(みごえ)」と呼ばれます。不足すると葉が枯れたり、果実の成熟が遅れる等の生育不良を起こしてしまいます。

カリウム

カリウムは、植物体内の様々な化学反応を促進します。葉でつくられた栄養分を根に送り、根の張りを良くすることから「根肥(ねごえ)」と呼ばれます。植物を丈夫にして害虫や病気などへの抵抗力を高める作用が期待できます。

中量要素

硫黄(S)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)は、中量要素と呼ばれています。

中量要素「硫黄(S)・カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)」
中量要素
中量要素
硫黄

硫黄はタンパク質を構成しているアミノ酸、ビタミンなどの生成に関与していて、クロロフィルの生成を補助します。

カルシウム

カルシウムは植物の分裂組織の生長に関与していて、正常な発育と機能のために必要となります。

マグネシウム

マグネシウムは葉緑体の構成要素で、光合成による炭水化物の生成や植物体内でのリン酸の移動に関与しています。

微量要素

鉄(Fe)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、塩素(Cl)は、微量要素と呼ばれています。

微量要素「鉄(Fe)・ホウ素(B)・マンガン(Mn)・亜鉛(Zn)・銅(Cu)・モリブデン(Mo)・塩素(Cl)」
微量要素
微量要素

鉄はクロロフィルの生成に関与します。不足すると、新葉が黄白色になり、ひどい場合は新葉が発生しなくなります。古い葉は緑が残り、新葉に症状がみられます。

ホウ素

ホウ素は、細胞壁の生成や構造維持に関与します。不足すると頂芽が黄化し、新芽の先端が枯死します。花芽形成にも影響を及ぼします。

マンガン

マンガンは、葉緑体の生成、光合成、酵素の活性化に関与します。不足すると、葉脈だけ緑を残して葉が黄化します。古い葉に症状がみられます。

亜鉛

亜鉛は、タンパク質の合成、オーキシンの代謝に関与します。不足すると、新葉の黄化、葉身や節間の伸長が抑制され、上部の葉が矮小化します。新葉に発生し、次第に全体に広がります。

銅は、葉緑体に多く含まれ光合成や呼吸に関与します。不足すると、根の伸長が止まり、葉が淡くなり下葉から枯死します。土耕では、欠乏症の発生はあまりみられません。

モリブテン

モリブテンは、根粒菌の窒素固定に関与します。不足すると、葉脈に黄斑が発生し、ひどい場合は葉がカップ状に巻きこんできます。

塩素

塩素は、光合成に関与します。不足すると、葉の先端が枯れてきます。欠乏症はあまりみられません。

土作りの基本

土作りの目的

植物が必要とする、養分や水分をバランス良く十分に供給できる能力(地力)を高めることで、作物生産力の維持・向上を図ることを目的に行います。

土作りに大切な3要素

土作りにおいて化学性・物理性・生物性の3要素が非常に大切です。これらの要素が一つでも欠けてしまうと、良質な土作りはできません。それぞれの要素が互いに影響を与え合い密接な関係にあります。

土作りに大切な3要素
土作りに大切な3要素

土作りの方法

深耕

土を深く耕すことによって、根群域の拡大、水分・養分の保持力の増加、排水性の良好化などを図ることができます。

植物の根は非常に深くまで伸びます。スコップ等で通常の耕運より深く掘り起こし土の中に酸素を補給するとともに小石や古い根、害虫等を取り除きましょう。

有機物の施用

有機物を施用することによって土と土の間に隙間ができます。この隙間に水分や肥料が保持されることで「通気性」や「保肥力」がある土になっていきます。

また、有機物を施用すると土壌中の微生物のエサになって活動が活発になります。微生物が有機物を分解することにより、植物の成長に必要な栄養が作られるとともに、有機物を分化する際に糊状の粘着物質を吐き出すことで土の粒同士を接着する役割を果たします。この働きにより土壌がフカフカな「団粒構造(※)」になりやすくなります。

団粒構造化すると通気性が良くなり微生物の活性が高まって、団粒構造がさらに発達します。化成肥料は微生物のエサにはならないので、化成肥料ばかりを施用していると土は「単粒化」してサラサラした砂場のような土に代わってきてしまいます。単粒化した土は密に詰まっていることから排水性が悪く、根張りのしにくい土と言えます。

団粒構造の土を目指し、定期的に有機物の施用をしましょう。

団粒構造:土壌粒子が小粒の集合体を形成している構造を指します。土が柔らかく通気排水に優れています。

主な有機物資材
植物性堆肥
バーク堆肥

植物の樹皮を主原料にした有機質資材。有機質として粗大でゆっくり分解することから土壌の膨軟化に長期効果が期待できます。

腐葉土

主に落葉樹の葉を主原料にした有機質資材。古くから「落ち葉堆肥」として利用されてきた土壌改良材です。

動物性堆肥
牛ふん堆肥

牛ふんを発酵させて作られた堆肥です。販売されている多くはもみ殻やおがくずといった副資材を使用して作れており、土壌改良材の効果も期待できます。また、肥料分も含まれています。

鶏ふん堆肥

鶏ふんを発酵させて作られた堆肥です。販売されている多くは鶏ふんのみで作れており、土壌改良材よりは肥料としての効果が期待できます。

石灰質資材の施用

日本の土壌は酸性に偏っていることが多く、一般的には土壌改良剤を利用して野菜に適した弱酸性~中性の土に矯正する必要があります。土壌改良材は10㎡あたり1㎏を目安に施用しますが、経年施用により中性に偏っている場合もあることから土壌診断を実施し、結果を確認して施用量を決定するのが望ましいです。土壌改良材は作付け2~3週間前に散布して十分に耕しておきましょう。

土壌改良材の種類
消石灰

生石灰と水を反応させて作られた石灰です。アルカリ成分が60%以上と高いことが特徴で速やかな酸度矯正が期待できます。アルカリ性が強いため肥料と同時に施用するとアンモニアガスが発生する可能性があることから肥料は消石灰散布の1週間程度後に施用しましょう。

苦土石灰
(炭酸苦土石灰等)

肥料成分(中量要素)でもあるマグネシウムを含む鉱物を加熱し粉砕した石灰です。消石灰に比べ効果が穏やかなことが特徴です。家庭菜園等で使い勝手の良い石灰質資材です。肥料は苦土石灰散布の1週間程度後に施用しましょう。

有機石灰
(かきがら、卵の殻等)

貝や卵の殻など天然素材で作られた石灰です。主成分が炭酸カルシウムのため酸度調整効果が期待できます。素材に含まれるカルシウムやマグネシウムなど他の微量要素も含まれていることから微量要素の補給も期待できます。他の石灰資材に比べ効果が穏やかで、散布後すぐに植え付けができる点が特徴です。

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長年、畑を耕作していると肥料成分が過剰・欠乏するなど養分の偏りが進みます。特に毎年定期的に同じ肥料を同じ量使用している場合、一部肥料が土壌中に残り、土がメタボ(=肥料成分が蓄積され過ぎている)状態になっている可能性もあります。

人間同様、バランスが悪い状態だと生育が悪くなったり、病害虫の発生につながってしまいます。栽培の基本である土壌を知るためにも、定期的な土壌診断の実施をおすすめします。

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肥料について

肥料の役割

自然界では成分が循環していますが、栽培植物では十分に生育するためには肥料を人為的に与える必要があります。

自然界
自然界
栽培植物
栽培植物

肥料の種類

無機質肥料(化学肥料)

鉱物などを原料に化学的方法で製造された肥料です。

無機質肥料
(化学肥料)
長所

施肥後すぐに効果が期待でき、成分量が計算しやすく施肥量の調整が容易です。

短所

過剰施肥となった場合、濃度障害(肥料やけ)が生じやすいです。また、土壌改良の効果は期待できません。化学肥料のみ継続的に使用すると土壌中の有機物が減少し、土の緩衝力がなくなってしまいます。

有機質肥料

動物質肥料、植物質肥料、有機廃棄物肥料などが由来の肥料の総称です。

有機質肥料
長所

肥料の効果がゆっくりと現れ、持続するものが多いです。また、土壌微生物による分解過程における生成物によって土壌の団粒化が促進され、土壌物理性(通気性、保水性、排水性)の改善が期待できます。土壌中の微生物の種類が増えたり、土の緩衝力(pHの変動しにくさ)も高まります。

短所

単位面積当たりの投入量が多く、労力が必要になることや、化学肥料ほどの速効性は期待できません。また、有機物由来のため、においの強い資材もあります。

成分による化学肥料の分類、化成肥料と配合肥料の違い

単肥

窒素、リン酸、カリウムのうち1成分のみを保障する肥料です。

単肥
窒素質肥料

尿素、硫安、塩安、硝安、石灰窒素など

リン酸質肥料

過石、重焼鱗、ようりんなど

加里質肥料

塩加、硫加、けい酸カリウムなど

複合肥料

窒素、リン酸、カリウムのうち2成分以上を保障する肥料です。

複合肥料
化成肥料

低度化成、高度化成、有機化成など

配合肥料

粒状配合肥料(BB肥料)など

化成肥料
化成肥料
配合肥料
化成肥料
化成肥料
化成肥料

化学的な工程で製造、粒状化させたもので、1粒の成分が均一なので散布しやすいことが特徴です。1粒の肥料に「窒素」「リン酸」「カリウム」のうち2成分以上が含まれた肥料です。

配合肥料(BB肥料)
配合肥料(BB肥料)

肥料原料を単純に配合したもので、コストが低いです。単一の肥料成分資材を配合することで、作物にあった成分の肥料をつくることができます。また、無機質と有機質といった組み合わせの肥料もあります。

肥料成分の表示

袋に記載されている「8-8-8」などの数字は、肥料1袋に含まれる窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)の含有量(%)を表しています。例えば、20kgの肥料袋に「8-8-8」と記載されていたら、窒素1.6kg、リン酸1.6kg、カリ1.6kgが含まれているということです。

指導書等でN・P・Kの必要量が記載されていますが、これは肥料そのものの量ではなく、肥料中の成分(窒素、リン酸、カリ)の必要量のことが多いので注意しましょう。

病害虫防除のポイント

野菜を安定的に生産し、品質向上を図るためには病害虫に対する策が必要です。病害虫に対しては特定の防除方法に偏るのではなく、様々な防除法を組み合わせた取り組みが必要です。

防除法とその具体的な方法

化学的防除
  • 農薬の使用
生物的防御
  • 害虫の天敵となる生物や微生物農薬の使用
  • フェロモン剤の利用による害虫の交信かく乱
物理的防除
  • 防虫ネットの使用
  • シルバーマルチやシルバーシートの使用(アブラムシ等対策)
  • 太陽熱による土壌消毒
  • 粘着板や捕虫網等での捕殺
耕種的防除
  • 病害虫が発生する時期をずらす
  • 同一作物を連作しない
  • コンパニオンプランツの利用
  • 接ぎ木苗の利用
  • 溝切り等による排水性の向上
  • 整枝、剪定による通気性や日当たりの良さを確保
  • 病気の原因(病気にかかった株や葉等)を圃場外へ持ち出す

病気の発病条件

農産物に病気が発生する条件は、人間が病気にかかる条件とよく似ています。

病気の発病条件
人間の場合
「主因」

病気となる原因菌(病原体)

「素因」

野菜の性質(病気に対する抵抗性)

「誘因」

病気になりやすい環境

この3つの要因が重なると病気として症状が発生します。つまり農産物が病気にかからないようにするためにはこの要因が3つそろわないように栽培することが必要というわけです。特に抵抗性が低下する原因としては過乾燥や過湿といった水分条件日照不足着果過多肥料過多が挙げられます。

農薬の役割

農薬について

農薬は作物に発生する病気や害虫の被害を防いだり、雑草を枯らすなど様々な目的で使用されています。

農薬
殺虫剤

一般的に生育に障害を与えるような線虫類、軟体動物、ダニ類、昆虫類を“農業害虫”と呼びます。害虫による被害は食害や吸汁など直接的なものや、ウイルスや病原菌の媒介による病害発生などが挙げられます。このような農業害虫を防除するのが“殺虫剤”です。

殺菌剤

作物に病害をもたらすものとして糸状菌などの菌類、細菌、ウイルス、ウイロイド、ファイトプラズマ等が挙げられます。これらは植物の葉・茎・果実などから侵入して感染します。感染すると細胞から栄養素を吸収し、細胞を殺してしまいます。このような被害を防ぐための薬剤が“殺菌剤”です。

除草剤

雑草は作物が吸収する予定だった肥料成分を横取りしてしまったり、雑草が作物より大きくなることによって、日光が十分に当らず、光合成に影響が出てしまったり、農業害虫の住処となってしまうなど様々な被害が出てしまいます。このような被害を起こさないように、“除草剤”が利用されています。

植物成長調整剤

作物をより効率的に生育させるために、生長を促進させたり、結実をよくしたりなど生育をコントロールする農薬を総称して“植物成長調整剤”といいます。代表的な作用として、生長や開花の促進、発根促進、球根や種子の休眠打破、ぶどうの無種子化などがあります。

農薬の剤型について

農薬は、均一に散布できて防除効果を十分に発揮させるため、さまざまな形状の製品に仕上げられています(これを製剤といいます)。粉剤、粒剤といった製剤の形態を「剤型」といいます。

国内で使用されている主な剤型とその特徴
粉剤

微粉(45μm以下)となるように製剤化したもので、そのまま使用します。粒径が小さく散布中にドリフト※しやすいため、風のない日に散布するなど注意が必要です。

粒剤

細粒(粒径300~1,700μm)となるように製剤化したもので、そのまま使用します。ドリフト※の危険性が少なく、使用しやすい点が特徴です。

水和剤

粉末状の製剤で、水に懸濁させて使用します。希釈後に静置すると沈殿するため、散布前にしっかりと混ぜて均一にする必要があります。

水溶剤

水溶性の粉状、粒状などの製剤で、水に溶かして使用します。有効成分が完全に水に溶けるため、希釈後に沈殿しにくいです。

乳剤

水に溶けにくい農薬の成分を水中で均一に分散するように乳化剤等を加えて安定化させた油状液体の製剤です。水に希釈し乳濁した状態で使用します。有機溶媒を使用しているため危険物が多いです。

フロアブル

農薬の成分を水に分散・懸濁させた液状の水和剤です。粉が飛び散ったり、溶剤がガス化したりせず、溶け残りも生じにくいため取扱いしやすいです。希釈前にボトルをしっかりと振って均一に混ぜておく必要があります。

ドリフト:農薬の使用におけるドリフトとは、散布された農薬が意図しない場所に飛散してしまうことをいいます。

農薬の使い方

農薬散布については正しい使用をしないと効果が出ないこともあります。農薬散布の前には必ずラベルをよく読み、適用作物・適用病害虫や使用基準を確認しましょう。

害虫も病気も予防的散布や発生初期の散布が効果的です。効果的に防除を行うことで結果的に最小限の薬剤散布で済むことになりますので初期防除に努めましょう。

水量10ℓに対する希釈早見表
希釈倍数
(倍)
100倍
500倍
800倍
1,000倍
2,000倍
3,000倍
農薬量
(㎖、g)
100
20
12.5
10
5
3.3
見方

薬液を10ℓ作りたいとき、農薬の希釈倍数が100倍の場合は100㎖(g)の農薬が必要です。

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